【咲安価】 京太郎「あの暑い夏をもう一度」
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3:名無しNIPPER[saga]
2017/07/10(月) 22:18:24.12 ID:mur6i4dzO
「いけると思ったんだけどなぁ…」

メガネのレンズを大雑把に払いながら、西田順子は呟いた。
桜の季節も真っただ中、ともに降り注ぐ花粉にいつも手を焼いていた。
視力を元に戻し、手に取るのは、昨年の麻雀誌やタブロイド紙。
「清澄。一人陥落」「初出場の奇跡もここまで」「大健闘、清澄高校ベスト4!」
どの紙面も、清澄高校の健闘を称える声、落胆する声、と反応は様々になる。

清澄高校麻雀部、昨年度の全国高校生麻雀選手権で、一躍有名校になった。
そもそも、長野県という県そのものが、「番狂わせ」で世間を賑わせてきた。
県下は風越一強―――――、長い間動かなかったその勢力図も、天江衣を擁する龍門渕高校がいとも簡単に書き換えた。

もちろん、簡単にというと語弊がある、そこにはそれなりのドラマが合った。
先鋒から副将まで綱渡り的な拮抗を風越と龍門渕が演じ、その末、池田華菜選手が天江衣に完膚なきまで叩きのめされる。
天江衣、その大器の輝きを、惜しげもなく見せつけたあの一戦は、メディアの間でも未だ語り継がれている。


「…こんなこと言っちゃいけないんですけど、勝ってほしかったですね」

となりにいるカメラマンが独り言のように呟く。
独り言にしては、随分に聞えよがしで、これまで貯めてきた不満を今こそ漏らすと決め込んだ腹だ。

「あそこで勝ってくれないと、何のために東京に行ったのか…」
「十分じゃない。あそこまで行ったんだから」
「優勝してなんぼでしょう? どれだけこっちは遠征費で文句言われたか…」
「大介君、だから…」
「そんなんだったら、最初から変な期待を―――――」
「…いい加減にしなさいっっ!」
「……」

怒鳴りつけて、上下関係の権威だけで物を聞かせる。
慣れない方法ではあるが、これ以上紡がせない、紡がせられない。
私たちは、メディアであると同時に、人であることを、忘れてはいないつもりだ。

「……一番悔しいのは、あの子たちなんだから」


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