【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」完結編
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◆Z5wk4/jklI
[saga]
2017/07/21(金) 20:27:49.62 ID:CDK467qC0
「はぁ、はぁ、はぁっ!」
茜は走り続けていた。
美城プロダクションを飛び出して、大通りを一キロ近く疾走していた。
夕方の大通りは人も多く、ぶつからないように気をつけなければいけなかった。
それでも走り続けた。茜は怖いと思っていた。いま走るのをやめたら、そのまま押しつぶされてしまう。
先輩プロデューサーには自分のことを認めてもらえなかったのかもしれない。
そもそも、自分はユニットのコンセプトに合っていなかったのかもしれない。
もしかすると、自分はアイドルだと思い込んでいただけったのかもしれない。
ずっとずっと、自分の勘違い、思い上がりだったのかもしれない。
恐怖に呑まれて、茜の頭の中をたくさんの考えがぐるぐる巡っていった。
走りながら、茜は驚いていた。思った以上に、疲労を訴えてこない自分自身の身体に。
こんなに長く、早いスピードで走り続けているのに、まだ余裕がある。
たくさんレッスンをして、体力がついたからだ。――アイドルをするために。
体育会系の茜にとって、基礎体力が向上することはうれしいことのはずなのに、今はそれさえも茜の心を黒く塗りつぶそうとするものとして襲い掛かってくる。
「あっ!」
瞬間、雑念にとらわれた茜の足がもつれ、茜はアスファルトの歩道に転んだ。
膝と右の肩を地面にぶつける。通学鞄が転がっていった。
「う、う……!」
茜は痛みを感じながら、身体が傷ついていないか心配した。
活発によく動く茜は、いつもプロデューサーから言われていた。
顔はもちろん、肌が見えるところに傷をつけないように気をつけろと。
目立った傷がついていないことにほっとして、それからすぐに、もうその心配に意味がないかもしれないことを思い出す。
「ううっ……」
茜の視界がにじんだ。
それでも茜は立ち上がる。腕で両目を乱暴にぬぐって、大股で地面を歩いて転がった鞄を拾い、また走り出す。
止まってしまったら、なにかに飲みこまれてしまうと思っていた。
それから茜はさらに走り続け、河川敷までたどり着いていた。プロデューサーと出会い、スカウトを受けた河川敷に。
秋の日は早く、河川敷は夕日を受けてオレンジに染まっていた。
ついに走り続ける体力も尽き、茜はスピードを落とす。
エネルギーを使い果たしたのと一緒に、茜の中の暗い考えもどこかに霧散していた。
とぼとぼと芝生の上を歩きながら、茜は涙をこぼして自分を笑った。
「あはは、逃げて、きて、しまいました」
茜は肩で息をしながら、今度は、どうして逃げてしまったんだろうと不思議に思っていた。
ユニットのみんなと出会ってから数か月は、ドキドキとワクワクの連続だった。
なにもかもがはじめて体験することばかりで、毎日が輝いていた。
数か月のあいだに、みんなはどんどん強く、かっこよく、きれいに、可愛くなっていった。
比奈も、春菜も、裕美も、ほたるも。
……プロデューサーも、最初に会ったときよりも頼れるようになったと思う。
自分はどうだったろうかと、茜は考えた。考えて、涙がこぼれた。
自分には強さが足りなかったから、逃げ出してしまったんだ。
「……もっと、強くならなくちゃいけなかったですね」
茜はお気に入りの真っ赤なポロシャツの胸元をぎゅっと握って、はぁっと熱い息を吐いた。
強くなりたいと思った。
けれど、ほんの少し、そう願うのが遅かった。
プロデューサーにスカウトしてもらって、こんなにアイドルをやりたいと思っているのに、目の前に、その道はもうなくなってしまっている。
どうしてこんなふうに思うようになったのか、茜自身にとっても、不思議だった。
「アイドル、もっと、やりたかったです……」
茜はそう口に出して、ついに歩みを止める。
それから空を見て、大粒の涙をぼろぼろ流した。
「うわあああああああああああああああああん!」
茜の大きな泣き声は、秋の空へと吸い込まれて行った。
第十話『こんな私に誰がした』
・・・END
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