千歌「一番可愛い二人」
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32:名無しNIPPER[saga]
2017/06/29(木) 21:50:55.88 ID:/x/H4S1ZO
私は小さく息を吐いた。

「曜ちゃんて、昔から凄く要領良くて、みんなの憧れだったんですよね〜。曜ちゃんの友達ってだけで、すっごく自慢だったんです。私、曜ちゃんの後ろばっかり着いて歩いてて……」

「そう言えば、どこに行くのもいつも一緒だったわよね。あひるの親子みたいで、可愛かったなあ」

おばさんは日記を閉じる。

「泳ぐのも同じくらいの時期に始めたのに、曜ちゃんがぐんぐん速くなって、どんどん上達して……すごいなあって」

学校の水泳の授業では、同じコースで泳ぐと、後からスタートした曜ちゃんがいつの間にか後ろにいて。
私は全然速く泳げなくて、励ましてくれる曜ちゃんに急かされて、焦ったりもした。
フォームが違うよって、指摘されてもよく分かんなくて、何度も教えてもらうのも悔しかったから、結局それっきりなこともあった。

「あの頃は、パパもよく家にいたからね。家で秘密の特訓して、千歌ちゃんを驚かせてやろうって二人して企んでたのよ?」

「えー、いいなあ」

「負けず嫌いだから。パパも曜も。パパはね、子どもの勝負に首をつっこむ大人気ない残念な人だったの」

「そんなことないですよ。曜ちゃん、実際、今じゃ高飛び込みで右に出る者はナシ! みたいな感じですし」

「あれでも、千歌ちゃんと一緒に高飛び込みできない自分は嫌われてるって、泣いてたし、記録が伸び悩んだ時期もあってやめたくなった時もあったんだから」

「ええっ、それ、色々と初耳」

「千歌ちゃんには言わないでって。そうやって、マイナスな面があるって知られたくなかったみたい。子どもだったけど、一人っ子のせいだからか、周りの子よりうんと甘えん坊に育ってたの……そのくせ、プライドは高い。ちょっと、ちやほやされ過ぎちゃったのね。良くなかったなって思う……って、私、育児の愚痴みたいおほほほ」

誤魔化すように、高い声で笑う。





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