14: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/06/22(木) 21:43:41.83 ID:8OABDCgr0
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シャワーの音が止まる。程なくして、パジャマ姿で髪を下ろしたはぁとさんが寝室へとやってきた。
「…」
「…すっぴんだからさ、あんまり…」
「あ…すいません」
つい見とれてしまった。すっぴんでも、いつもと変わらない愛らしい顔だ。ノーメイクでも十分芸能界で通用すると思う。
はぁとさんは俺の左隣にぼすっと腰を下ろす。そこから少しの間、互いに言葉を発することも、相手を見ることも出来なかった。ふいにはぁとさんの右手が視界に入る。そこへ自分の左手を近づけた。
はぁとさんも同じように右手を。おずおずと差し出した、差し出された手をどちらともなく握り合い、指を絡ませ合う。
「その」
はぁとさんの方へは向けないまま、口を動かす。
「髪…下ろしてると、やっぱり印象変わりますね」
「…結んでる方が、いい?」
「いえ」
少しだけ、指の力を強める。
「結んでるのも、下ろしてるのも…どっちも俺は好きですよ」
「…そっか」
はぁとさんの方を見るが、顔は長い髪に隠れてしまってよく見えなかった。でも、髪からはみ出た耳が、朱色に帯びている。それをたまらなくいとおしいと思った。
手はにぎったまま、はぁとさんに近づく。少しだけ、はぁとさんの体が強ばった気がした。
「…こっちを向いてくれませんか」
ゆっくりと、はぁとさんがこちらに顔を向ける。その頬に、開いている自分の右手を添えて、さっきとは違って、今度は自分から。
「ん」
二回目の、キス。
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