11: ◆saguDXyqCw
2017/06/18(日) 20:01:49.05 ID:5UUNa7QZ0
夕食はいらないというと、お母さんは不満そうな顔をした。
ご飯はあーちゃんと食べて帰ると連絡していたのに、お茶ぐらいだと勘違いしていたらしい。
唐翌揚げは明日のお弁当のおかずになるだろう。
部屋に入ると私はベッドに腰をかける。窓の外はすっかり暗い。居間からはテレビと両親の笑い声が聞こえてきた。
私も自室のテレビの電源を入れる。地方局の番組でユッキーが下町案内をしているのが映し出された。
テレビをBGMに部屋着に着替える。ぼんやりとテレビを観ていたが、テレビラックの小物入れに視線を落とした。
その引き出しを開ける。中には封筒が二つ入っていた。淡い水色の封筒と、どこにでもある茶封筒。
水色の封筒は、初めてのファンレターだった。
前はこの引き出しをファンレター入れに使っていた。喜ばしいことに、その引き出しでは入りきらなくなって別の大きな箱に移したけど、これだけはここから移す気にはなれなかった。
貰った時は嬉しかった。読んでは閉まって、また開いては読んでを繰り返した。
そんな頃を思い出し、頬が綻ぶ。
でも、いつしかそんな事はしなくなった。
慣れというのもあるだろう。今でもファンレターを貰うのは嬉しいし、ちゃんと目も通す。
だけど初めてというのはやはり特別で、だからここから移さなかった。
でも、ここに入れたままの理由はそれだけじゃない。
気がつけば、私の顔からは笑みが消えていた。
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