41: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:35:06.39 ID:yFIcZ1s10
「ねぇ、ハニー!今の、見ててくれた!?」
「ああ、しっかり見てたぞ。流石、俺の自慢のアイドルだな!」
「――!やったやったやったー!」
美希さんはそのままプロデューサーさんにダイブ。プロデューサーさんも、かわさずに受け止める。抱きしめられた美希さんは、心底嬉しそうだった。
――他の人となんて話さないで。
鼓動が早くなる。疲れているせいなのか、いつものように表情をコントロールできない。目を見開いている自分を客観視はできても、それを止めることは出来なかった。
――いつもいつも、私にあの視線を向けていてくれたなら。
美希さんを見つめる彼の目を見る。抱き着かれて恥ずかしそうであっても、彼はそれを受け入れていた。彼女の髪を撫でる彼の瞳は、とてもやさしかった。
心が絞られるように痛い。心は考える能力を持っている脳みそにあるって聞いたことがあったけれど、今だけは心は心臓にあると痛感していた。だって、こんなにも胸が痛い。
――私が、あの時。素直に心を開いていたなら。
終わらない悔恨を続ける。あの時は、私だけを見ていてくれた瞳は、もう一人占めできるようなものじゃなくなっていた。
それでも、届かない思いを込めて彼の瞳を見つめる。ようやく向き直って見つめた彼の瞳は、当然のごとく、私の方を見つめ返してはくれなかった。
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