3:名無しNIPPER[sage]
2017/06/11(日) 18:59:28.93 ID:kXRpQ9pe0
「なるほど……お前たちの欲しいものはそれらか」
サトハは若干頰を引きつらせなが言います。あげるのが惜しいほどの希少品を私たちが選んだからなのか何故欲しがるのか理解できないガラクタを私たちが選んだからなのかはその表情から察することはできません
「とりあえず風呂の用意はしてあるから入るぞ」
くるりと踵を返し、屋敷に向かうサトハ。くるくるとカップ麺を回してるメグとヨタヨタと甕を抱えたネリーが後に続きます
私とハオも三人の後に続いて歩いていると、鉄扇を指先で器用にくるくる回していたハオが、私が手に持っている本を覗き込んできます
「随分と古い本ですね。何が書かれているんですか?」
「さあ……私にはよくわからない内容で……。ハオは読めますか?」
ハオは本を受け取ると、鉄扇で頁を捲ります
「表紙に書かれているのは、からくりおぼえがき……ようするにジャパニーズギミックノートですね。内容は……よくわかりませんが、日本の昭和初期の物だと思います」
ハオが鉄扇で指した一文には「時既ニ遅ク、日本敗戦濃厚。カネテヨリノ計画ニ移ル」と書かれています。どうやらこの人物は、かの有名なパシフィックウォー末期に、日本の敗戦を悟ったようです
けれど、計画とは一体なんでしょう
◇
「はぁー。ゴクラクゴクラク」
私は湯船に浸かり感嘆の息を漏らします。今日1日の疲れと身体中に染み付いた埃とカビが、お湯の中にジンワリと溶け出ていくようです
辻垣内家の風呂場は広く、洗い場も4つあり、今はそのうちの一つでネリーがシャンプーハットを装着しています
湯船も6人くらいはゆうに入れる大きさで、私とハオとメグがノンビリと浸かっているのでした
サトハは「夕食の準備をしてくる」と言ってカラスの行水の如くさっさと出ていってしまいました
「ミョンファー!髪洗ってー!」
「はいはい」
私は湯船から立ち上がり、ネリーの背後につき、手のひらにシャンプーを出します
「メガン、背中流しましょうか?」
「あ、いいですね。お願いシマス」
わっしゃわっしゃとネリーの髪を洗っていると、他の二人も何やら洗いっこを始めたようです
実は私は普段からネリーの頭を洗っているわけではありません。けれど、大衆でお風呂に入ることで、このような雰囲気が生まれたのでしょう
人と人の間の壁を取り払い、絆を結ぶ。美しきかな日本文化
最後に桶でお湯を流しシャンプーを落とすと、ネリーは子犬のように頭をプルプル振ります
「ありがと、ミョンファ!」
そういうや否や駆け出して、サトハがいないのをいい事に湯船にダイブするネリー。どうやら私の髪は洗ってくれないようです
湯船で泳ぐネリーを眺め、苦笑を浮かべながら、私は新品のシャンプーのボトルに手を伸ばしました
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