9: ◆2mwK9kDO1Y[saga]
2017/06/10(土) 19:58:30.22 ID:EDLtVNMv0
ある日の事です
その日はたまたま、僕は早く家に帰ることができました
本来なら、ゆっくり体を休める事の出来る、夢のひと時……そんな日のことでした
妻が、突然、僕の前に現れたのです
いや、その表現は不適切かもしれません
妻は、いつものようにくたびれて帰宅した僕を、玄関で出迎えてくれました
「おかえりなさい、あなた」
「ああ、ただいま」
自然と僕の口から挨拶の言葉が漏れた後、その不自然さに今更ながら気が付きました
僕はなぜ、ただいまと言ったのでしょうか
僕は、一体誰に挨拶をしたのでしょうか
ふと、顔を上げました
それは紛れもなく、僕の妻でした
まず脳裏に浮かんだのは、彼女は僕の脳内で作り出された幻なのだということです
だが、僕は真っ先にその考えを打ち消しました
僕が、妻の幻影を見る理由がないのです
妻を失って、確かに感じるものはありましたが
寂寥感だとか、悲哀だとか、そういう言葉で説明できる程度でしかありません
ならば、言葉で説明できない現象が、僕の身に起こるはずもないのです
次に考えたのは、彼女は別人であるということです
誰かが妻に変装して、この場に立っているのです
色々と考えた結果、それもあり得ないと思いました
彼女は、余りにも妻に似すぎていたのです
ならば、今僕の目の前に立っているこの女は、一体誰なのでしょうか
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