17: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/07(水) 21:51:59.30 ID:MX9h6kd3O
その日の夜。
ぐでーっとだらしない格好でぼんやりとテレビを見ていると、ふいにアタシのスマホに着信音が鳴った。この着信音は…!それを聞いた途端、水底に沈みかけていたアタシの心が浮き上がる。急いで通話マークをタップする。
「あ、もしもし。恵美か?」
「うん!もうお仕事は終わったの?」
「あぁ、今はホテルにいるよ」
「そうなんだ、お疲れ様!ねぇねぇ、ホテルってどんなとこ?部屋が狭かったりベッド硬かったりしない?」
「あはは、ないない。ウチは765プロだし、あの社長だぞ?凄く良い所だよ。部屋は広々!ベッドはふかふか!ご飯も美味しい!雰囲気も良い感じでさ。これで文句言ってたらバチが当たるよ」
むー…良いホテルって聞いて安心したけど、Pがあんまり褒めるもんだから内心ちょっと拗ねる。そんなにそのホテルがいいですか、そーですか。
「…ふーん。良かったじゃん」
表に出すつもりは無かったのに、思わず少しトゲのある言い方をしてしまう。けどPは電話越しなせいかそれに気付かず、
「ほんと良かったよ。ま、ウチの方がずっと良いけどな!恵美居るし」
瞬時にアタシのトゲを抜いた。お陰でアタシの心はまんまるのつるっつる。…おまけにふにゃふにゃ。
「………ふーん」
…危ない危ない、電話越しで良かったぁ。もう、油断も隙も無いんだからっ。
「そういえば恵美、もうご飯は食べたか?」
「あ…まだ」
「えー、遅くないか?太っちゃうぞ」
「ゴメンゴメン。なんか作る気になれなくてさ」
これは嘘でも何でもない。お昼も昨日の残りで済ませちゃったし。
「…?まぁいいや。それでさ───」
さっきまでの時間はのろのろ過ぎていったのに、電話し始めてからの一時間はあっという間だった。あーあ、逆だったらいいのにな。
101Res/77.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20