【モバマスSS】中野有香「ありがとう、これからずっと」
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◆kmaH6vzpLQ
[sage]
2017/06/04(日) 21:36:48.14 ID:ZxixxFvh0
アイドル――
それは自分とは無縁の、遠い世界の話だと、ずっとずっと、そう思っていました。
ステージの上でキラキラのスポットライトを浴びて、可愛い服を着て、可愛い歌を歌って、たくさんの声援を浴びて……
女の子ならば誰しも一度は憧れる、アイドル――
以下略
AAS
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◆kmaH6vzpLQ
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2017/06/04(日) 21:38:03.50 ID:ZxixxFvh0
「押忍! 志望理由は……!」
最終オーディションの面接、今でもはっきりと覚えています。練習のときはああじゃないこうじゃないと試行錯誤していましたが……やっぱりあたしは、自分を誤魔化すことは出来ませんでした。いつも通りのありのままの自分で挑もうと決めたんです。
そうでなければ、意味がないと思ったから。空手に全力で取り組んだ自分、それを認められたうえで、アイドルという世界に入りたかったから……
面接官の方々やプロデューサーさんは、やっぱり少し驚いていましたが……でも、あたしを認めてくれました。
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AAS
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◆kmaH6vzpLQ
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2017/06/04(日) 21:39:38.30 ID:ZxixxFvh0
アイドルというのはそう甘いものではありません。テレビの向こう側で輝いて見える子達も、裏では弛まぬ努力をしているのです。
「有香、レッスンはどうだ?」
「押……じゃなかった、お疲れ様です! レッスンはですね……正直、全然ダメです」
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AAS
5
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◆kmaH6vzpLQ
[sage]
2017/06/04(日) 21:40:39.19 ID:ZxixxFvh0
でも、少しだけ自信を無くしてしまった時期もありました。同じ事務所の子達は、見渡すとみんなとっても可愛らしい子ばかりで。やっぱり自分は、そういう『可愛い』っていうものになれていないんじゃないかと……
「何言ってるんだ、有香はどこからどう見ても可愛いアイドルじゃないか」
プロデューサーさんはそう言ってくれましたけど……自信がありません。女の子らしい服は持ってないし、お化粧も自分でしたことなんてありません。
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AAS
6
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◆kmaH6vzpLQ
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2017/06/04(日) 21:41:42.29 ID:ZxixxFvh0
「よし、今日は予定を変更して買い物に行くぞ!」
「買い物……ですか?」
「そうだ。有香、お前に好きな服を買ってやろう」
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AAS
7
:
◆kmaH6vzpLQ
[sage]
2017/06/04(日) 21:42:28.09 ID:ZxixxFvh0
「これが……あたし……」
事務所に帰り、プロデューサーさんが手配したスタイリストさんに手を加えてもらい、頂いた服を着用してみます。
――鏡に映った自分の姿に驚きました。全然自分じゃないみたいで、まるでテレビで見る、アイドルみたいで……
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AAS
8
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◆kmaH6vzpLQ
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2017/06/04(日) 21:43:54.82 ID:ZxixxFvh0
やがて少しずつ、本当に小さなお仕事ですがやらせて頂ける機会が増えてきました。まだまだ憧れのステージとは程遠い……
だからと言って、どんなお仕事でも手を抜くなんて言語道断ですっ! あたしは常に全力で与えられた役目を全うしました。
ですが、現実というのは厳しいもので……
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AAS
9
:
◆kmaH6vzpLQ
[sage]
2017/06/04(日) 21:45:14.72 ID:ZxixxFvh0
ある日、遂に大きめのお仕事が回ってきました。日替わりで新人アイドルがメインMCを務めるバラエティ番組、そこにあたしの名前が挙がりました。
プロデューサーさんが苦労してようやく取ってきれくれたお仕事。このチャンスを逃すわけにはいきません。
大丈夫、出来る。普段のレッスンに加えて本番に向けての練習も充分に行ってきました。必ず、成功させます――
以下略
AAS
10
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◆kmaH6vzpLQ
[sage]
2017/06/04(日) 21:46:18.15 ID:ZxixxFvh0
とうとう、気持ちが負けてしまい泣き言を言ったことがありました。
自分にはアイドルなんて向いていない、これ以上やっても仕方ない。何より、プロデューサーさんの期待に応えられない……それが、一番辛かったんです。
今思えば、それらしい理由を付けてただ逃げていただけでした。
それでもそんなあたしの言葉を、プロデューサーさんは黙って聞き入れてくれて、最後に一言だけ。
以下略
AAS
11
:
◆kmaH6vzpLQ
[sage]
2017/06/04(日) 21:47:22.19 ID:ZxixxFvh0
「番組出演が、決まった」
寒さが厳しくなってきた冬のある日、あたしはそう告げられました。
出演するのは新人アイドルによるスポーツバラエティ番組、なんと製作会社側からのオファーでした。
空手黒帯所有者、そこを見込まれたようです。今まで打ち込んできた空手が、今の夢に生きた……嬉しくて嬉しくて仕方がありませんでした!
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AAS
12
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◆kmaH6vzpLQ
[sage]
2017/06/04(日) 21:48:44.96 ID:ZxixxFvh0
「どうした? 少し元気が無いように見えるが?」
「押忍! プロデューサー! いえ、ちょっと昔を、あたしがアイドルになったばかりの頃を思い出していまして」
「昔って言っても、そんな前じゃないだろう? ……ま、色々あったからな、ずいぶん昔のことのように思えるってのは分かる」
以下略
AAS
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