1:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:02:55.22 ID:pVIxyO240
希望のあった人情物。
剣士は出てこない。
第1作 【モバマス時代劇】本田未央「憎悪剣 辻車」
第2作 【モバマス時代劇】木村夏樹「美城剣法帖」_
第3作【モバマス時代劇】一ノ瀬志希「及川藩御家騒動」
第4作【モバマス時代劇】桐生つかさ「杉のれん」
第5作【モバマス時代劇】ヘレン「エヴァーポップ ネヴァーダイ」
読み切り
【デレマス時代劇】速水奏「狂愛剣 鬼蛭」
【デレマス時代劇】市原仁奈「友情剣 下弦の月」
【デレマス時代劇】池袋晶葉「活人剣 我者髑髏」
【デレマス時代劇】塩見周子「おのろけ豆」
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2:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:05:03.10 ID:pVIxyO240
塩見周子は京の町に入った。
利休白茶に光沢がついたような銀髪。
切れ長の瞳。
3:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:06:21.93 ID:pVIxyO240
一方小早川紗枝は、京の大地主の娘。
艶めいた黒の長髪。
目尻はおだやかに下がる。
4:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:07:59.35 ID:pVIxyO240
2人にはある共通点があった。
時折、妙に強情な態度をとることである。
周子が、形式だけでいいものを
5:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:09:38.67 ID:pVIxyO240
2人の両親は、土地柄と職業柄もあって仲が良かった。
しかし彼女達は、自分たちの娘らが
親しくなるとは予想もしていなかった。
6:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:10:10.37 ID:pVIxyO240
周囲が「おのろけ」に呆れるほど、
周子と紗枝はぴったり寄り添って大きくなった。
「紗枝はん」
7:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:10:59.59 ID:pVIxyO240
この2人は、また、新しい遊びをよく思いついた。
その中で一等気に入っていたのは、『茶会話』であった。
これは、2人が形式張った、
8:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:11:44.13 ID:pVIxyO240
たとえば葛餅は『嫌い』。
ひなあられは『おめでとう』。
最中は『退屈』。
9:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:12:14.66 ID:pVIxyO240
打ち合わせもせず、気にくわない相手に2個
葛餅を送ってしまった時など、互いに笑いを堪えるのに苦労した。
無論その人は遊びなど知らないから、きょとんとする。
10:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:13:41.18 ID:pVIxyO240
さて、周子が京に帰ってきたのは、この紗枝に会うためであった。
今度開かれる茶会は、紗枝が最後に参加するもの。
紗枝は肺に水がたまる病にかかって、現在療養中の身。
11:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:14:45.46 ID:pVIxyO240
だが、2人を決定的に引き裂いてしまう出来事があった。
周子は、まだ紗枝が元気だった頃に、
彼女が大切にしていた茶器を借りた。
12:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:16:20.26 ID:pVIxyO240
周子は、それをなだめるために、
彼女の好物である羊羹を茶会のたびに持って言った。
無論、謝罪の意味が当てられている。
13:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:17:26.82 ID:pVIxyO240
こうなってくると周子も頭にきて、
茶会に顔を出さなくなってしまった。
それどころか、京の町から飛び出してしまった。
14:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:17:58.79 ID:pVIxyO240
そうして口も聞かず、顔も合わせないようにして、数年経った。
しかし今度の茶会は、紗枝が顔をだす最後の茶会。
もしかすると、今生の別れになるやもしれぬ。
15:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:18:57.01 ID:pVIxyO240
京には死の匂いが充満していた。
周子が発つ前から、にわかに飢饉の予兆があったが、
まさかここまで深刻なものになろうとは。
16:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:22:13.09 ID:pVIxyO240
貧しい住民達はおかしくなっていた。
死体を食らうことはなかったが、
毎日大量に出る遺灰を、これでもかと畑にまいていた。
17:名無しNIPPER[sage]
2017/06/02(金) 12:22:43.76 ID:DjqgVPUUo
ふみふみ「佃煮にして食べればよいのです…」
18:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:23:50.15 ID:pVIxyO240
まさか、紗枝も畑の肥やしになるのか。
周子はふとそう思ったが、それはありえぬことであった。
京は富裕層と貧困層で分断されている。
19:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:24:24.76 ID:pVIxyO240
周子は塩見家に戻った。
家族らは帰郷の理由を承知である。
だから何も言わず、周子を菓子蔵に通してくれた。
20:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:25:18.57 ID:pVIxyO240
周子は棚の前で頭を悩ませた。
茶会にどの菓子がふさわしかろうか。
また羊羹など持っていて、
21:名無しNIPPER[saga]
2017/06/02(金) 12:26:17.50 ID:pVIxyO240
ふと、大皿いっぱいに盛られた
おのろけ豆が目に入った。
豆に、あまじょっぱい煎餅をまとわせた菓子である。
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