18:名無しNIPPER
2017/05/31(水) 18:01:51.05 ID:3uv3ojMy0
「杉の原木を大陸から仕入れております」
その話は桐生にとって興味深いものだった。
だが同時に、疑わしいものだった。
なぜ桐生屋と財前屋が睨み合っている時期に、
この女が話を持ってきたのか。
それに大陸からの杉の輸入など聞いたこともない。
「…実物を見ないことには、なんとも言えない」
桐生がそう言うと、双葉は自身の屋敷に彼女を招いた。
木村屋は貧乏所帯と聞いたが、妙に立派な屋敷だった。
だが、庭に原木がごろごろ転がっていたので、
景観が台無しになっていた。
桐生は目利きができる者に、原木を調べさせた。
「…たしかに杉ですな。それも、かなり上等な杉です」
桐生は、ちらりと双葉の方を見た。
さきほど迄の、慎ましい表情が一変していた。
「杏が良心的な値段で売ってあげるよ」
もちろんそれが言葉通りのはずがなく、
桐生屋は法外な金子を支払う羽目になった。
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