森久保乃々「これだけは無理なんですけどぉ!!」
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30: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/05/24(水) 21:55:16.46 ID:+HFze8z+0

 コーヒーを注いでいる間、僕は、乃々ちゃんが描いた絵本の事を考えていた。

 乃々ちゃんにあの絵本の事を面白いと僕は言った。でも、そうじゃない。いや確かに、確かに面白かったのだが、それ以上に。それ以上に、暖かかった。

 美味く言語化できない自分の語彙力を恨む。あの絵本は、面白いの一言で片付けるにはもったいないような気がする。でも僕は、絵本の魅力を人に説明できるような言葉に直すことが出来ない。

 登場人物が、ストーリーが、下書き状態の絵が、一つ一つの要素全てが僕の心を暖めた。この感動を、乃々ちゃんに伝えたい。でも、伝えられないことが悔しい。

 少し淹れすぎたせいで、コーヒーは零れそうになっていた。少しだけ飲んで、仕事部屋に戻ろう。

 あのノートには『13』と書いてあった。もしかしたら、同じようなものがあと12冊あるのかもしれない。

 もしそれらがあるとするならば、見せてもらうことは出来るのだろうか?いやでもそれは流石に厚かましい気が…。

「…あ。」

 そこで思い出した。昨日の抱っこの件、うやむやになって結局乃々ちゃんに謝ってなかった。どうしよう。

「…今日謝ろう。」

 日付は、いつの間にか変わっていた。




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