梨子「曜ちゃん、怒らないで聞いてね」
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94:名無しNIPPER[saga]
2017/06/01(木) 23:19:55.76 ID:48xMgNtuO
電車からバスに乗り換え、揺られること1時間。
曜ちゃんと来たそのままのルートを、私は千歌ちゃんと過ごしている。
後ろめたさはあった。当たり前だけど。酷いね。
分かってやっているから、なお、性質が悪い。

「梨子ちゃん、あの、手繋いでもいい?」

「いいよ」

バスから降りて、千歌ちゃんがそうお願いしてきた。
特に嫌な気持ちも沸かなかったので、私は一つ返事で承諾した。
もじもじと内股なのが乙女っぽい。

「あの、梨子ちゃん!」

繋いでから、数歩歩いたくらいで千歌ちゃんが叫ぶ。

「千歌の手、ごめん、緊張して湿ってきたみたいっ。どうしよう〜」

どうしよう〜、と言われても。

「バカね。そんなこと気にしないから」

「ええっ、私だけ?」

「千歌ちゃんと手を繋ぐなんて慣れっこだもの」

「そんなに繋いだっけ……」

回数の問題じゃないの。

「ほら、千歌ちゃん、あっちの景色が凄いのよ」

「え? あ……待って待って」

千歌ちゃんの緊張を解すために、海原の見渡せる場所に引っ張っていく。
せっかく出かけるなら、楽しい方がいいものね。

「恋人岬……ロマンチックだねぇ」

「そうね」

って、どうして私は千歌ちゃんに優しく接してるんだろう。
普段の友だち感覚だと、どツボにはまってしまうだけなのに。
でも、頼りない所を見るとついつい世話を焼いてしまう。
たぶん、曜ちゃんならそんな所もキュンとするのかもね。

あの日、曜ちゃんが隣にいた時、私の手を握ってくれないかなとか、抱きしめてこないかなとか、そんな妄想ばかりしていて。
最終的に、ベンチの所では千歌ちゃんへの不安と、曜ちゃんが近すぎるせいで、感極まって涙が溢れ出て大変だった。
曜ちゃんが私の事を全くこれっぽちも、そういう対象として見てくれていないと分かっているのに、どうしてあんな期待をしてしまうのか。
あるはずもないことで、心をあんなに乱してバカみたいだった、あの日の私。
千歌ちゃん、千歌ちゃんも、そうなのかな。




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