112:名無しNIPPER[saga]
2017/06/04(日) 18:50:22.06 ID:wAEe1nHVO
「梨子ちゃん、どうしよう」
急に弱気になる千歌ちゃん。
「そんなこと言われても、勝手に上がるわけにもいかないし」
「靴もないよ」
「ええ」
玄関に並んでいるのは一足分だけ。
それは、高校指定のローファーだ。
だから、ここに後輩ちゃんが住んでいて、学校から帰ってきた。
それはかなりの確率で間違いはない。
山の方に帰る鳥の声が聞こえた。
暗くなれば二人とも家に帰るだろう。
何も無いなら、それでいい。
「梨子ちゃん、その辺、私探してくるからさ、ここにいて?」
千歌ちゃんが言って、外に走っていく。
「千歌ちゃん!?」
「戻ってくるかもしれないし、私もその辺りの公園とかコンビニ見たら帰って来るから!」
と、遠ざかっていく。
そうは言っても、他人の家にずっと上がり込んでおくのは気が引けてしまう。
一度門の外に出よう。そう思って、踵を返す。
「……」
そして、ふと靴箱が視界に入った。なんだろう。
「なにか」
ひっかかってる。
靴箱まで置いてあるのに、どうしてローファー一つしか靴が置いてないのだろうか。
他の家族の方の靴は? そもそも、こんな一軒家の家の広い玄関に、普段使っている靴が置いてないのは不自然だ。
逆に言えば、そういうご家庭なんじゃ。
「いいかな……ごめんなさい」
他人の靴箱を無断で開けるのはよろしくないと思いつつも、非常事態だから、と音を立てないように靴箱の取っ手を引っ張った。
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