101:名無しNIPPER[saga]
2017/06/04(日) 16:05:56.51 ID:wAEe1nHVO
「女の子同士は、やっぱり……無理かな」
千歌ちゃんが言った。
私には、それを否定することができない。
「違うけど、ただ、慣れてなくて」
友だちとはできない。そう言ってしまうのは簡単だった。
そう言われる自分が、いつかの未来に待ち受けていると思うと足がすくむ。
自分に重ねて、上手く断れない。
「嫌なら、ちゃんと言ってね、梨子ちゃん」
真剣な瞳。
痛いほどだ。
「ちょっとだけなら」
苦し紛れに、私は言った。
「ちょっと? 変な梨子ちゃん」
クスリと千歌ちゃんは笑った。
彼女は私の目を見て、少し待っていた。
目を瞑って欲しいのだと気付いた。
ややあって、私は呼吸を止めた。
「じゃあ、ちょっとだけ、ね」
間近で聞こえた。真っ暗な中、夏の潮風、柑橘の香り。
瞬間、歌に変わりそうなメロディが脳裏に流れた。
ウソばかりの切ない旋律。
その日、私のファーストキスが終わった――。
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