467: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/06/29(木) 11:39:28.39 ID:8fhCldZ+0
イヨウ中佐は、現ドイツ軍の最前線をなぞる。口調は砕けたものだが、その眼差しは刃のように鋭かった。
(=゚ω゚)ノ「我々機動迎撃大隊の役割は、ドイツ戦線における敵艦隊への臨機応変な対処。ま、有り体に言っちまうなら便利屋だよぅ。
深海棲艦の攻勢に対し、常に不利な地点を補強し、戦況を互角以上に持っていく………とりあえず、休暇申請が絶望的に降りないことだけは確かだよぅ」
('A`)「……休暇なんざない方がマシですよ。うっかり休もうものなら病室で一週間の素敵なバカンスをプレゼントされかねない」
(=゚ω゚)ノ「それもそうだよぅ」
ブリーフィングルームの中が笑い声に満ちたが、俺からすれば割と本気で笑い事じゃない。
つーかあんな怪我だったのによく1週間で戦線復帰できたな俺。アレか、ドイツの技術力はって奴か。
(=゚ω゚)ノ「とはいえ、我々の手元にはリスボンやベルリンを生き抜いた歴戦の精鋭部隊と貴重な戦車、機動車両が相当数配備されている。
加えて、アメリカ軍の命令で一時的に東欧連合軍に身を置くことになったサイ大尉の部隊も後日合流予定だよぅ」
( ゚д゚ )「例の新設部隊の件はどうなりました?ほら、対ヒト型に特化した白兵部隊の編成は?」
(=゚ω゚)ノ「残念ながらアレは白紙化したよぅ。フランス軍が身を以て無謀さを示してくれたからね」
(;'A`)「…………」
別段俺に責任のあるものではないし、イヨウ中佐もそんな意味で口にしたわけではないだろう。それでも、なんとも言えない罪悪感に居心地が悪くなる。
俺が軽巡棲姫を文字通りの白兵戦で仕留めたという話は、ベルリン放棄が決定したその日の内にヨーロッパ全土を駆け巡る。
砲弾や銃弾は完全に防ぐが人間の身体は障壁を透過できる、そして障壁下の体表硬度は人間のそれとかわらず、急所も共通している───もたらされたこれらの情報は、原理の追求もそこそこに巨大な衝撃を軍部に与える。
そして、それに窮地の極みにあったフランス軍が飛びついた。
膨大な数の深海棲艦によって全方面の防衛線が崩壊し錯乱状態にあったフランス軍は、あろうことか即席の銃剣突撃隊を編制して戦艦タ級flagshipを旗艦としたパリ侵攻部隊に突撃させちまった。
……結果については“パリが人肉のミンチでまみれた”とだけ伝えておく。
俺のあの軽巡棲姫に対する一撃は、心理の隙を突き、油断を突き、はったりをかまして辛うじて加えたものだ。いわば搦め手につぐ搦め手と運の産物であり、正攻法からはほど遠い。
そもそも、針鼠のように武装した軍艦に肉弾突撃をかけたとてたどり着く前に圧倒的な火力で殲滅されるのがオチだ。加えて深海棲艦は膂力でも人間を凌駕しているため、肉薄に成功してもなお対処される可能性も十分にあり得る。
結局のところ、よほど完璧に奇襲をこなすか、向こうがまともに身動きが取れない地形におびき寄せて多少の犠牲に目をつむり強襲するか、或いは尋常ならざる手練れの兵士が肉薄に成功するか、まぁどれも現実味のない話だ。
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