286: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/05/31(水) 01:52:04.95 ID:qbOhevfD0
彼女の張り巡らした策は、今のところ上手くいっていた。艦娘達の目をかいくぐり、人間共が住まう陸の奥深くに同胞達と共に入り込み、奴らが「クニ」と呼んでいる活動領域を内部から食い破った。
目的の場所に「核」も据え、“彼女”の同胞達は猛烈な勢いで数を増やしつつある。西に居た人間と艦娘達は一方的に蹂躙され、海からやってきた新手も叩きつぶした。ほくそ笑んでしまうほど美しく、“彼女”の策は上手くいっていたのだ。
だが、今はどうか。南に逃げた人間共は戦力をまとめ上げると同胞達の南下を完全に食い止め、より東へと進むはずだった“彼女”たちは半ば廃墟と化した街で立ち往生している。
ようやく抵抗の芽を摘めるかと思えば、人間側にも新手が現れて彼女が呼び寄せた艦載機を根こそぎ焼き払った。
『…………』
“彼女”は、戦闘能力こそ高いが種族の中で極端にプライドが高いというわけではない。とはいえ全くないわけでもないし、「脆弱で愚かで取るに足らない存在」である陸の猿に、良いようにあしらわれても傷つかないほど低くもない。
今の“彼女”の中には、人類をどのようにいたぶり叩きつぶしてやろうかというどす黒い悪意が、“彼女自身”が抱いた悪意が渦巻いている。
『……………』
『─────』
“彼女”は、背後の同胞に目で準備ハイイカ?と問いかける。
赤い眼をした同胞は、任セテヨとでもいいたげに妙に自然な笑みを浮かべ────
ドルンッ、と。
跨がるそれのエンジンを、鳴らして見せた。
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