328:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/30(日) 12:17:03.09 ID:DSAJ+Ylu0
仲村創にとって東條悟の存在は大きかった。
分かり合えない存在だった。ずっと相容れない相手だった。
時には憎み合い、時には命を狙われた間柄だったが、それでもいつも
気が付いた時には背中合わせで共に窮地を乗り越えてきた仲間だった。
そんな仲間との別れが後数秒の所まで迫ってきている。
なにも心の整理がつかないまま、ただただ無情に過ぎ去る時が大切な
仲間を死の世界へと誘う。
だから、創はたった一つだけ自分に出来る事を勇敢に戦い、今まさに
最後を迎えようとする名もなき英雄への手向けにしようと決めた。
「東條....お前、勝ったんだな」
「うん...なかむらくんにもみせたかったなぁ」
「ぼく、がんばったんだよ?」
「ああ。俺の完敗だ。東條、お前は先生の正しさを証明したんだ」
「もう浅倉威が人を殺すことはない。もう誰も泣くことはないんだ」
「ああ。そっか...だったら、みんなはぼくをみとめてくれるよね?」
「これで、わかったでしょ?」
「きみより、ぼくのほうがせんせいにふさわしいって」
焦点の合わない瞳でなにもない虚空を掴むように仲村の頬に手を
伸ばした東條悟は、それきり言葉を話すことなく永遠の眠りに就いた。
「東條...とうじょぉぉぉぉ....」
「馬鹿野郎...英雄になっても死んじまったら....」
「意味なんて...意味なんて、何も意味なんてないだろうが!!」
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