29: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/14(金) 09:59:08.32 ID:Sw2uysfwO
「ん…ああ、掛けてくれたのか。ありがとう。」
「あ……いえいえ!こちらこそすみません…寝ちゃってたみたいで…。」
起き上がった時、彼が浮かべたのはいつもの笑顔でした。
でも…見ちゃったんです。目を覚ます瞬間の、彼のぞっとするような冷たい目を。
暗いとも、病んでいるのとも違うんです…それはただただ、空虚な目で。
「さて、今日からまた通常任務か…あの子の仇、ちゃんと取らないとな。」
「はい!あ、司令官、ごめんなさい。ちょっとシャワーだけ浴びてきてもいいですか?」
「いいよ、行っておいで。」
それで逃げるようにシャワー室に向かって、青葉は一心不乱に頭からシャワーを浴びていました。
人肌程度のお湯が、次々排水溝に吸い込まれて…さっき見ちゃったもののせいでしょうか、一瞬だけ、それが血に見えてしまって。
…青葉はきっと、彼の事を好きになりかけているのだと思います。
だからこそ、もっと彼を知りたいと思ってしまう。
なのにそうやって近付く程、謎ばかり増えて行く。ますます、わからなくなる。
それでも彼の事を考えると、胸は暖かくて…どうしたらいいのか分からなくて、青葉はまた泣いちゃいました。
シャワーの温度と涙の温度は、あんまり差がないように思えました。
涙が流れてる感覚だって、今は目元にしか感じない。
だけど…まるで、身も心にも涙を浴びているような。そんな感覚に陥っていました。
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