255: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/11/16(木) 04:09:20.73 ID:j4j5Io3UO
「………。」
「あ、やっと起きた!ご飯冷めちゃうよ?」
目を覚ますと、娘が屈託の無い笑みで彼を見下ろしていた。
朝食の香りと朝の光が、乱れていた呼吸に平静を与える。
先程まで見ていた悪夢とは、真逆の光景がそこには広がっていた。
「ああ、ありがとう…少ししたら行くよ。」
「うん!待ってるね!」
あの子は『もう大丈夫』だ。今だってこうして良き娘でいてくれる。
何も怯えることなどないのだ。
そう己に言い聞かせるも、直後に胸の痛みを感じる。
“………あの時俺が、親権争いに負けなければ…。”
独立した今も、娘は自分を大切にしてくれる。
彼は変わらず良き父であろうとし、葛藤しながらも娘を大切に思っている。
だが、親子の間にあった数年の空白。
その間に壊れてしまったものと、生まれてしまったもの。
それはもう、二度と取り返す事は出来ないのであった。
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