八幡「ゲームが完成しそうだからすぐこい?」 ルナ「ルナのゲームだよ」
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40: ◆SqZQSXA.b2[saga]
2017/06/04(日) 22:38:02.07 ID:PPylOUlV0
俺たちは,黄土色の煉瓦で建てられた家が密集する中心部へと案内されているようだ.

しかし,不思議なことに人影は一向に見当たらない.

三人分の足音が,夜の闇に紛れていく.

八幡「一つ,聞きたいんだが」

天剣の乙女「なんだ?」

八幡「夜中は出歩かないのが,フツウなのか」

現実では,深夜にくたびれたスーツを着た中年が歩いていたり,建物の陰で悪ぶった青年達が屯っていたりする.

それらは,ある程度の治安が保証されているから,成立することだ.

本来,夜はあらゆる悪事の温床となりうる.

天剣の乙女はかぶりを振った.

天剣の乙女「私の知る限り,ここまでの静けさは,殺人鬼の現れた霧の都市以来だな.

一応家屋の中で人の動く気配はするが,揃いも揃って彼らは,息を殺しているようだ」

それを聞きつけたファイターが思い出したように言う.

ファイター「ああ,今はちょうど,東天紅.

空を見てみな,もう薄く白んでいるだろう.今は.村人たちが日に一度だけ祈りを行う時間なんだ.

死んでしまった兎がこの地で暴れることをやめて,無事に月へ還れるようにってな」

八幡「あんたは,しなくていいのか」

ファイター「俺はあの兎畜生をこの村の守り神としては,認めていない.

この世界で頼れるものがあるとすれば,自分の力だけだ」

八幡(つまり,無宗教ってことか.こっちのほうが話は聞きやすいな)

八幡「その兎畜生について,詳しく教えてくれ」

余計な駆け引きは,一切なし.こちらは云わば客なのだから,聞くのは自然だろうという判断である.

ファイターは一瞬顔を顰めたが,すぐに無表情になった.

ファイター「この村は,昔はもっと廃れていたそうだ.

森からは有象無象の魔物が,狼のごとく目を光らせていて,大人が仕事でいなくなった隙を狙っては子供を浚った.嘆きと無力感が,村中を襲った.

それだけじゃない.反対の街道からは強欲な商人がやってきて,村でとれた農作物をびた一文でかっぱらっていく.分かるか,人間ですら,敵だったんだ.

この村は,弱者だった.賢い奴もいなかったし.そういうやつがいてもすぐに村から出て行ってしまう.どうしようもなかったんだよ.

だが,あるとき森で異変が起きる.魔物共が,何者かに追い出されるようにして数を減らしていったんだ.

そして,この時間帯に決まって身を裂くような悲鳴と地鳴りが聞こえた.

その正体が,ずばり暴れ兎だったわけだ.

お月様から追放された兎は.なんの因果かあの森...いまはカミの森と呼ばれている場所に住み着いた.

村人たちはこれ幸いと喜んだが,次第に不安になっていくわけだ.

いつか,村にやってきて,暴れるんじゃないかってな.


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