八幡「ゲームが完成しそうだからすぐこい?」 ルナ「ルナのゲームだよ」
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◆SqZQSXA.b2
[saga]
2017/04/26(水) 20:28:47.95 ID:EtS2my8j0
中天にかかる太陽が、容赦なく地上を照りつける。
瞼を閉じていても、赤い血潮で覆われたせかいが一瞬で形成されるほどだ。
研究室内でこんなことが起こりうるはずもなく、ここが異世界であることを告げていた。
涼しい風が鼻先を通り過ぎ、青臭い香りが鼻孔をくすぐる。
意を決して、地面に横たえられていた躰を起こした俺は、あたりを見回した。
そこは見渡す限り、風の奏でる旋律のままに揺れ動く高原だった。
なだらかな小丘をいくつも抱え、右手の地平線には緑暗色の森が広がっておりどことなく不気味だ。一方で、左手は草に埋もれるようにだが、確かに砂利のひ
かれた小道がふもとまで続いている。
それから五感を総動員して、生き物の気配がないことを確認して息を吐いた。
前回は、周囲にブラッドウルフと呼ばれる獣がいたことに端を発する一連の流れに逆らうことはできなかった。
つまり今回こそは、陽乃さんの編んだ物語に従うつもりはなかったのである。
いくら陽乃さんが改ざんしないと保証したところで、なんの安心も生み出さなかった。
逆説的に、彼女は俺に自由である条件を課したのではないかという、疑念が増すばかりだ。
それと、前回と違う点はもう一つある。
そっとポケットに指を触れさせると、硬い感触が伝わる。
おもむろにポケットから、それを引き抜く。
八幡「天剣の乙女、そしてデュエリスト、モルディカイ」
一枚の絵画のように静止した彼らをみると、胸が苦しくなる。
ここでは、彼らは刻々と脈打つ現実なのだ。
血を流し、圧倒的な力を振るい、他者を傷つける。
しかし今回に限って、彼らを使えば、俺の助けになる。
陽乃さん曰く、『命令を一つ心から言葉にしてみて。それを叶えるためだけに、彼らは
君の疑似的な生命力を吸い取って、カードから召喚されるから』
このカードは、お金が湯水のごとく湧く魔法のカードよりも、よほど危険なものだ。
使いどころを、間違えないようにしなければ。
俺は、カードをポケットの奥深くへとつっこんだ。
つま先は、すでにコンパスのように目指すべき方角を向いている。
その先に、なにが待ち受けていようと振り返ってはいけない。
陽乃さんの言うとおり、自分を冥界へと誘う幽霊などどこにもいないのだ。
臆病な恐怖心が、そう思わせているだけで。
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