永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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789:名無しNIPPER[saga]
2023/01/07(土) 22:37:47.63 ID:G+zmOxss0


『粉薬は飲まなければ熱は収まらぬ』

『塗薬は塗らねば痛みが和らがぬ』

『貼薬は貼らねば傷を補えぬ』


薬売り「それらと同じく……目薬は、”瞳に垂らさねば霞は消えぬ”のですよ」


 薬売りは、流石薬売りを名乗るだけあって、実に薬学に富んでいた……が、相手を考えぬ所がやはり薬売りであった。
 この阿呆がたった今したり顔で講釈を垂れた相手は、薬売りなんぞより遥か先を行く”薬師の道を極めし者”ぞと言う事を、一体どこまでわかっているのやら。
 そんな、まさに釈迦に説法を地で行くこの男に不快感を覚えぬはずもなく、身共なら「誰に抜かしているのだ」と、拳骨の一発でもお見舞いしている所であるが……
 


 ああ、やっぱり。



「だったら――――その薬はどうやって作ればイイ!?」

「何をしたって、何も効きやしないのに――――何年生きても、何も見えやしないのに!」



 ……この時、この女が何を思い、何の意図でこんな台詞を放ったのか。それは身共にもわからん。
 ただ一つ言えるのは、薬売りの言葉が”迷いを刺激した”と言う事は確かなようで。



「言ってみろ――――できるモノなら答えてみろ!!」



 にしてもあの男は、本当に他人の神経を逆撫でするのが上手い……知ってか知らずか、極自然に失言を放っては、周囲の空気をヒリつかせよる。
 傍にいればはた迷惑極まりない男であるが、しかしそれ故に傍から見てる分には愉快でもある。
 このように、厄介者は厄介者なりに、何か与える物があると考えれば、まぁ、辛うじて大目に見てやらんでもない。と、思わなくもない。



「 は や く し ろ ! 」



 ま、つくづく哀れな男と言う事よの…………きっと今までも、そうやって【真】と【理】を得続けてきたのであろうて。
 自らの存在と、引き換えにな。




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