永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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787:名無しNIPPER[saga]
2023/01/07(土) 22:25:59.36 ID:G+zmOxss0

 思い返せば、あのそらりす丸での一件――――あの時、身共は確かにこの耳で聞いた。
 「お前が本当に恐ろしい事はなんだ」と尋ねて回る海座頭の質疑。
 その答えは、数多ある因果と縁を暴き続けたにしては意外…………いや、だからこそ辿り着いた答えなのだと言えるのかもしれない。


『知るのが怖い』


 海座頭の問い掛けに凛として答えた薬売りの姿は、紛れもなく本音を表していたと見る。
 怒り、恨み、悲しみ、渇望…………モノノ怪を成す情念の一つ一つが、結局は行きつく先が”無”でしかない事を、薬売りはすでに存じておったのだと身共は思う。
  

「さあ、終わりにしましょう……」


「そして、始めましょう」


 なればこそ、あんなにあっさりと答えることができたのだ……海座頭が、一体どんな幻を見せてくるかもわからぬあの場面でだ。
 「全ては幻である」。あの言葉は決して海座頭に対してだけではない事を、身共はしかと見抜いていた。
 故に我思う。ふぅむ、実に哀れなる奴よ…………。
 きっと薬売りにとっては、浮世の何もかもが”幻”にしか映っておらぬのであろうて。



「さぁ」



(さぁ)



【さぁ】




 そしてその対象は――――己が自身さえも含む。




薬売り「……………………」




 だからこそ、答える事が出来たのだ…………こうして、”本物の蓬莱の薬”をその手に抄う事で。




薬売り「………………では」




 光を抄いしその手を、口元にまで運ぶ事で。




『蓬莱山輝夜姫の懇意への返答…………この場で申し上げ奉る』




 永遠に限りなく近づいた上で、確かに応えたのだ――――”言葉無き言葉”で持って。











【ふぅ】





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