永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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551:名無しNIPPER[saga]
2017/12/21(木) 01:25:49.97 ID:quhZaAAU0


てゐ「あ……」

薬売り「おや……」


https://i.imgur.com/nLIBNt4.jpg


てゐ「もう、朝、か……」

薬売り「もう、朝です」


 妖兎は、窓から漏れる光を、何やら神妙な面持ちで見つめ始めた。
 妖兎本人が口走るように、夜行性の兎にとっては、朝の木漏れ日は夢現への入り口と同義なのだ。
 しかしながらまぁ……だからと言って、必ずや朝に眠るとは限らん。
 そこはほれ、我ら人でもそうであろう?


てゐ「なんか……不思議な感じ……うちらにとっては眠りの合図なのに」


 我らとて、享楽にかまけ気が付けばついつい明け方まで……なんて、往々にして起こる事。
 特にこの場合は、空に輝く月明かりが――――自身の”最後の光景”になるやもしれぬとあらば。
 眠る間も惜しんで、いつまでも見つめていたいものよ。


薬売り「まぁ、如何に夜行性とて……時には例外くらい、ありましょう」

てゐ「そう、ね……つかよく考えたら、夜行性とかあんまり気にしたことないかも」
 

 そう言うと、妖兎は不意に語り始めた。
 その内容は、他愛もない世間話であった。
 「思えば、随分と奔放に生きた物だ――――」
 そう切り出した妖兎の真意は、過去への夢心地と共に、ほんの少しの”後悔”も含まれていた……のかもしれぬ。
 

てゐ「夜更かしならぬ朝更かし……つか、徹朝もしょっちゅうだったっけ」

薬売り「人の生活に、合わせていたのですか?」

てゐ「はは、違う違う……あたしったら、一日の予定とかなんも決めてなくってさ」

てゐ「腹が減ったらメシ食って、出掛けたくなったらどっかに消えて、飽きるまで遊び続けて、眠くなるまでずっと起きてて……」

てゐ「時間なんて関係なかった。したい時にしたい事だけをしてた」

てゐ「――――逆に言えば、”それしかしてこなかった”」


 そんな妖兎だからこそ、律義に予定を守り続ける玉兎が、不思議でならなかったそうな。
 自分程とは言わずまでも、一日くらい・一刻くらい・一瞬くらい……玉兎は、それすらも破らなかったそうな。

 言うなれば、【時間に縛られた飼い兎】と【時間から解き放たれた野良兎】。
 この全く異なる二つの生き方は、「果たしてどちらが正しいのか」。
 そう、問われた時、誰にも答える事などできやしまい。





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