永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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142:名無しNIPPER[saga]
2017/04/04(火) 23:23:28.35 ID:mAW1yNKRo


薬売り「竹取物語……ですか」

紫「ふふ、やっぱり知ってたんだ」

薬売り「現存する最古にして最初の物語……してその名は、今日までありとあらゆる文化にも、影響を及ぼしております故」

紫「ロマンティックよねぇ……初めて生まれた物語が、まさか月を題材にした幻想譚だったなんて……」

紫「あっ」


――――その後、翁嫗、血の涙を流して惑へどかひなし。
 あの書き置きし文を読みて聞かせけれど、『何せむにか命も惜しからむ。誰が為にか。何ごとも益なし』とて、薬も食はず、やがて起きもあがらで病み臥せり。

 中将、人々引き具して帰り参りて、かぐや姫をえ戦ひ留めずなりぬる、こまごまと奏す。
 薬の壺に御文添へて参らす。広げて御覧じて、いとあはれがらせ給ひて、物も聞こしめさず、御遊びなどもなかりけり。
 大臣上達部を召して、『何れの山か、天に近き』と問はせ給ふに、ある人奏す、『駿河の国にあるなる山なむ、この都も近く、天も近く侍る』と奏す。
 これを聞かせ給ひて、

 あふことも 涙に浮かぶ わが身には 死なぬ薬も 何にかはせむ

 かの奉る不死の薬に、また、壺具して御使ひに賜はす。
 勅使には、調石笠といふ人を召して、駿河の国にあなる山の頂に持てつくべき由仰せ給ふ。峰にてすべきやう教へさせ給ふ。
 御文、不死の薬の壺並べて、火をつけて燃やすべき由仰せ給ふ。

 その由承りて、兵どもあまた具して山へ登りけるよりなむ、その山を『ふじの山』とは名付けける。



紫「ああごっめ〜ん、まだ残ってたわ」

薬売り「そう、かぐや姫が月へと帰った後、翁は病状に倒れ、帝は姫のおらぬ世界に未練はなしと不死の薬を山へ燃やしてしまった……」

薬売り「そして不死の薬の煤を浴びた山は”不死山”と呼ばれるようになり、いつしか”富士山”と名を変えた」

薬売り「それが物語の本当の終着点。広く世に知られた、結の幕切れ……」

紫「さすが薬売りさん、博識な所もステキ」

薬売り「お戯れはよしてください……有名な物語じゃないですか」

薬売り「にしても、何故に……こんな物をお見せになさるので?」

紫「ふふ、それはね……」




 その煙、いまだ雲の中へ立ち昇るとぞ言ひ伝へたる。




紫「まだ、物語は終わっていないからよ」




【竹取物語――――之・真】




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