92: ◆AZbDPlV/MM[saga]
2025/04/06(日) 23:21:37.38 ID:NyPq988kO
辺古山 「お願いします」
動物病院に連れられ、今は診察台の上に載せられている。
獣医 「はーい、リュウ君だねー。この子大人しいねー」
辺古山 「はいっ! そして賢いです!」
辺古山が興奮気味に答える内に体重を測られ、獣医の手には体温計が握られている。
(猫の検温っつったら──)
今の俺は猫なのだから、動物病院で検査を受けるということは、それは当たり前のことで仕方ないこととはいえ、それでもやっぱり、トイレ同様、恥はある。
獣医 「おや、イカ耳になってる。直ぐに済むからねー、大丈夫だよー」
ズブッ
(だよなぁッ?!)
獣医 「うん。体重、体温共に問題ないね!」
「…………」
さらに大人しくなった俺の至るところを触診し、瞳孔や口腔を診られる。
獣医 「よーし。採血とワクチンするねー」
辺古山 「我慢だぞ、リュウ!」
応援してくれるのは嬉しいが、特に注射は苦手ではい。さっきの検温の方が、気持ち的に数倍も苦手だ。
プスッ
獣医 「おっ! 注射嫌がらないなんて、エラいエラい! 強い強い!」
針が刺さっても動じない俺に、獣医が頭を撫でて褒める。猫になってから、ずっとこの調子だな……。
獣医 「採血してウイルスとか調べるから、待っててねー」
辺古山 「はい。お願いします」
―――――――――
辺古山 「何もなくて良かったな。もし、何かあったとしても、最後まで面倒をみるつもりではあったが」
辺古山 「やはり何もなく健康である方がいい」
病院から戻り、ソファで丸くなる俺の頭を撫でる辺古山は、母性に満ち溢れた微笑みを向ける。
まぁ、猫の姿でも健康であることが解ったのは俺としても良かったな。少なくとも、この姿になったことで、体に不調や持病のような不都合は起きてないってことだからな。これからの猫生で持病があるとなったら、心と懐の問題で、辺古山に負担を掛けることになる。あの病院で何らかの病気を診断されていたら、何が何でもどこかでひっそりと死ぬことは、考えていた。
辺古山 「いつか坊ちゃんにもお前を紹介したいな」
辺古山の春が、今日一日で終わることはなさそうだと、欠伸をひとつして、ソファから下りる。爪研ぎの使用感を確かめるために、前足の爪を爪研ぎでバリバリと暫く引っ掻き倒した。
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