20: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2017/03/02(木) 16:49:15.85 ID:+/5mbZAU0
女吸血鬼「ところで、君……最近こっちに来る頻度が上がったんじゃないかね」
女「そうですか?」
女吸血鬼「ああ、前は――君が少女だったころは――週に2日3日顔を出す程度だったが……」
女吸血鬼「ここ最近はほとんど毎日だぞ」
女「……居心地がいいんでしょうね、きっと」
女「吸血鬼さまはどうなんですか?」
女「ずっと一人だったでしょう、寂しくなかったんですか?」
女吸血鬼「そうでもない。何せ君たちの村が近くにあるからね」
女吸血鬼「定期的に君のような物好きが来たものさ」
女「物好き……ですか……?」
女吸血鬼「そうだね。わざわざ何が出るか分からない夜の森を抜けてここまで来るんだ」
女吸血鬼「これを物好きと言わずになんと言えばいいか、私は分からないな」
女吸血鬼「それに――」
女「それに、なんです?」
女吸血鬼「寂しさ、という感情が分からなくなるくらい、長く、生きすぎた」
女吸血鬼「寂しさだけじゃない。覚えたことよりも、忘れたことの方が多いくらいだ」
女「…………」
女「それでも――」
女吸血鬼「それでも、なんだい?」
女「……私のことは覚えていてくれますよね……?」
女吸血鬼「――…………」
女吸血鬼「どう……だろうね……」
女吸血鬼「なにせ自分の名前を忘れたくらいだ」
女「……」
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