俺ガイルSS 『思いのほか壁ドンは難しい』 その他 Part2
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[sage]
2022/10/11(火) 23:19:28.90 ID:Djle0+rf0
陽乃「あ! あれ、雪乃ちゃんの乗った飛行機よ」
まるで何かを誤魔化すかのように、わざとらしくはしゃいで見せながら指さす方向に目を向けると、ちょうど飛行機が一機、滑走路から空に向けて飛び立つところだった。
八幡「 ……… "本物"ってあるんですかね」
ふと口を衝いて出たのは単なる独り言に過ぎなかったのだが、そんな俺の横顔を、なぜか陽乃さんは黙って凝っと見つめている。
しかしやがて、
陽乃「そうね。比企谷くんが本物だと信じているなら、それが本物なんじゃないかしら?」
あまりにも漠とした問いにふさわしい、答えともいえない答えはまるで哲学か禅問答のそれだ。
だが、確かにその通りなのかもしれない。
本当の本物。そんなあるかどうかもわからないものをずっと追い続けた俺は、ある意味、幸せの青い鳥を探して旅していた、あの兄妹のようなものだったのかも知れない。
苦労して追い求めていたはずのそれは、実は手を伸ばす勇気さえすればいつでも届くところにあったのだ。
手にした葡萄が甘いか酸っぱいかは些細な問題に過ぎない。
自分が心から欲し、希(こいねが)うものを自分自身の手で掴み取るために、気持ちを行動に移す事こそが大切なのだから。
そして、その過程で失敗することや間違いを犯すことも決して悪い事ではないのだろう。
なぜならば、数え切れないほどの失敗と、数えるのもイヤなるほどの挫折を積み重ね、黒歴史の上に更なる黒歴史を厚く塗り重ね、トライ・アンド・エラーどころかエラー・アンド・エラーを繰り返してきた俺だからこそ、今はこうして自分だけの“本物”を手にすることができたのだから。
甲高いエンジン音の尾を引きながら、機体は徐々に高度を上げて行き、何もない虚空の彼方へ吸い込まれるように消えて行く。
春に向けて日に日に長くなる太陽は既に傾きはじめ、気がつくと午後の斜陽があたりを黄金色に染め始める。
やがて太陽は水平線に姿を消し、明日の朝には再びその姿を現す。
泣こうが喚こうが常に地球は回り、人々は日々途切れることなく生活を営む。
そして、―――― これからも俺の青春ラブコメは間違い続ける。
俺ガイルSS 『(やはり)俺(に)は友達がい(ら)ない』了
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