俺ガイルSS 『思いのほか壁ドンは難しい』 その他 Part2
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[sage]
2020/03/16(月) 21:22:23.58 ID:IsKPfli80
雪乃「 ……… ごめんなさい。あなたの期待に沿えなくて」
窓の外を眺める俺に耳に、雪ノ下がぽしょりと呟く声が届いてきた。
八幡「 ―――― 期待?」
その言葉の意味を理解することができず、思わず聞き返してしまう。
雪乃「そう。あなたが求めていたのは"本物"だったのでしょう?」
雪ノ下が目を伏せたまま薄く微笑む。
雪乃「でも、私は違う。少なくともあなたの求めている“本物”ではないの」
訥々と語る、いつもとは異なるその声の響きが俺の胸に深く突き刺さる。
八幡「本物 …… じゃない?」
雪乃「ええ、そう。あなたがどう思っているのかは知らないけれど、本当の私は、いつも姉の影に隠れて母に怯えているだけのただ臆病で小さな子ども。姉さんの真似さえしていれば、いつかはあの人のようになれると堅く信じ、そう錯覚していたの」
そこで言葉は途切れ、ゴンドラを流れる音楽とアナウンスの声がふたりの間に落ちた束の間の沈黙を埋める。
雪乃「でもそれは違った。気がついたら、私は自分では何も決められない人間になっていたの。中身のない、意思のないただの人形。目を固くつむり、耳を塞いでじっとしてさえいれば、いつの間にか嵐は過ぎ去ってくれる。ずっとそう思っていたの。ほんと、そんなところは昔からちっとも変わっていないのね」
乾いた声で自嘲気味にそう告げる雪ノ下の横顔は、俺の目からはまるで姉と瓜ふたつに映って見えていた。
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