俺ガイルSS 『思いのほか壁ドンは難しい』 その他 Part2
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[sage]
2019/07/07(日) 22:51:04.06 ID:VlhyZjJS0
やや間を置いて、おずおずと振り向いた彼女の視線は相変わらず俺に向けられることはなく、だが、その瞳が微かに揺れ動いているのがわかった。
いざ声をかけはしたものの、何をどう伝えたらいいのかすらわからない。中途半端に上げた手が行き場を失い、どこにもたどり着けぬまま悪戯に彷徨う。
それこそまるで夜空に浮かぶ月の影を素手でつかもうとしているようなものだった。
しかし、それでも俺は、―――
陽乃「 ―――― だめだよ、雪乃ちゃん。あなたはまた友達を、―――― 今度はガハマちゃんを裏切るつもり?」
背後からかけられたあねのんの言葉に、雪ノ下がびくりと反応し、こちらに向けて踏み出しかけていた足が再び止まる。
由比ヶ浜の名を耳にした三浦がはっと目を瞠り、どういう意味なのかと探るように俺と雪ノ下の顔を交互に見る。
陽乃「今までもずっとそうだったでしょ。忘れたの?」
優しく諭すかのような声音に、そこにあるべき温もりはまるで感じられない。そしてその言葉は的確に妹の弱点を突く。
雪乃「わ、私は ……… 」
ただでさえ白い顔を更に蒼白にして、雪ノ下が今日初めて俺の前で口を開こうとした。
―――― しかし、その言葉は途中で飲み込まれ、胸の前で小さく握り締められた手は、やがて力なく体の脇に垂れ下がる。
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