87: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/02/12(日) 22:57:57.18 ID:nOJuozZtO
佐藤「なにか問題が起きたみたいですね」
ちひろはそこで美波のまえに座っている帽子の男が見知らぬ人物であることに気づいたようだった。すこしだけばつの悪い顔をすると、すぐに表情をもどして言った。
ちひろ「申し訳ありません、慌ただしいところをお見せしてしまって……」
佐藤「いえいえ、アポもなしに来たのはこちらのほうですから」
そう言うと佐藤は腕時計に目を落とし、ソファから立ちあがった。
佐藤「ではそろそろ失礼します」
美波はあっけにとられた。佐藤の表情から波でさらわれたかのように真剣さが消えていた。目当ての品物が店に置いてなかったときにみせる足取りで部屋を横切り、あっという間にドアの前まできた。
かろうじてプロデューサーが去ってゆくのを思いとどまらせようと、佐藤の背中に声をかけようとした。つぎの瞬間、佐藤は首をめぐらし部屋のなかにいる三人を視界におさめながらふたたび口角をあげた。
佐藤「そうそう。政府による亜人虐待の証拠ですが、近いうちにお見せできると思いますよ」
佐藤は帽子のつばを持ち上げると、応接室から去っていった。残された三人はそれぞれ種類のちがう困惑を胸に浮かべていた。そのなかでもとくに美波は、なにかに見捨てられたような気持ちに陥っていた。感情そのものが錨になったみたいに、美波はソファに座ったまま、身動きがとれないでいた。
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