346: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 15:02:27.19 ID:uktM1pJmO
今日はここまで。アーニャの父親の友人が山頂の風景を語るときのセリフは、樫村晴香という哲学者が風景を言葉で描写したときの語りを借用しました。ちょっと長いけど、素晴らしい描写なので飲用してみます。
石灰岩地帯に広がるガリグと呼ばれる低木林に一日いると、太陽の高度と雲の動きに従って、植物と空気が刻々と色を変えていくのが観察できます。そして、太陽が地平線に近づく頃、奇妙な光景に出くわすのです。ほとんど水平の光を受けて、草地の上に無数の銀色の線が出現し、揺れ動き、それを追う視線は、暗くなりかけた草地と明るい光の間を激しく往復させられ、視界全体が、滲むようなハレーションに浸される。ハリュシネーションのような……。これは草地に大量に蜘蛛が棲んでいて、ちぎれた巣が風に乗って舞い上がり、水平の光だけを反射して現れる。それを見ていると、何というか途方もない快楽で、捕らわれたよくに釘付けになってしまいます。死んでもいい、というような感覚。正確にいうと、生きていることと、死んでいることの差異が構造的に変動し、両者が近づいてくるような感じです。−−樫村晴香「自閉症・言語・存在」(保坂和志『言葉の外へ』所収)
このような風景描写、一生に一度でいいから書いてみたいです。
さて、次回はパッション溢れる佐藤さん。
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