263: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:27:25.15 ID:7K73HWKCO
レッスンを終えたアナスタシアは膝に両手をあて、下を向いて息を整えようと努力する。床に汗が滴るにまかせておくと、そのうち呼吸が落ち着いてくるが、それともに身体を動かしていたあいだは感じないでいられた苛立ちと自己嫌悪が復活してきてしまう。
無力感も。
美波はいまも外へ出られない。プロダクション側が現在の状況を鑑みて、美波がメディアに出ないようにしていることもあるが、なにより美波自身から気力が失われてしまっている。亜人管理委員会の嘘と、それを見抜けなかったことはおろか加担してしまった自分自身への絶望。そして亜人虐待の映像。これらが美波の心を挫き、抜け殻のようにしてしまったのだ。
アナスタシアも例の映像を見た。興味本位からではなく、もっと個人的な理由から。田中が眉間を撃ち抜かれる冒頭の映像から頭が理解を拒んだ。次のプレス機による圧殺の映像に変わった瞬間、アナスタシアは手に持っていたスマートフォンを投げ捨てた。まるで実際に拷問に使われ、いまだ血のついている道具を手に持ってしまったかのように。さいわい、床に落ちた瞬間に映像は停止した。それから一時間してから、やっとアナスタシアは床に落ちた携帯をひろうことができた。その日は悪夢を見ることになった。
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