新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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2: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:03:12.31 ID:5kzXp0UHO
1.あの外国の人はいないんだ



「おまえはのべつ死を口にしていて、しかし死なない」−−フランツ・カフカ [創作ノート]



その生物は死なない……

その生物は亜人と呼ばれている

その生物はーー


−−七月二十二日・埼玉県・永井家

永井圭が玄関の扉を開けると、玄関に母親のものではない女性ものの靴が一足、ていねいに並べられ、つま先を圭の方に向けていた。

圭はその靴を見た。見て、靴があること以上のことは思わず、自分もスニーカーを脱いで、靴箱にいれた。

真夏の日差しは、夕方近くになっても弱まらず、白い光線から放射された熱が、学校から帰ってくるあいだに圭の身体からすっかり水分をぬきとってしまっていた。太陽が西に傾き、輝く線の角度が水平に近づいていっても、紅色とオレンジ色が入り混じった、夕暮時にふさわしい色彩に空は染まらず、住宅街の無機質な並びに熱を浴びせつづけていた。蜃気楼が生まれそうなくらい暑い。なのに、住宅街の輪郭はあいかわらず固まったままだった。圭は喉を渇きを我慢しつつ、リビングを抜け、キッチンにむかった。

リビングのソファには、やはり姉が腰掛けていた。姉といっても、血のつながりは半分だけだったが、今更そんなことを気にするでもなく、圭は姉の後ろを通り過ぎた。姉はキッチンへ向かう弟を追って首を回し、その背中に向けて声をかけた。


美波「おかえり、圭」

永井「姉さん、今日は早かったんだ」


圭は手に持ったガラスのコップに水が満たされるのを見つめながら、美波にこたえた。浄水器から出てくる水をコップの四分の三程まで注ぎ、口をつける。美波は圭がコップの水を飲み干すまで待ってから返事をした。


美波「今日はオフだから。夕飯もこっちで食べてくつもり」

永井「母さんは買い物?」

美波「うん。もうすぐ帰ってくるんじゃないかな」

永井「そう」


圭は飲み終えたコップを流しに置くと、ふたたび姉の後ろを通り過ぎ、二階にある自分の部屋に向かおうとした。圭がリビングのドアを開け、廊下を通り、階段の一段目に足をかけようとしたとき、おなじようにドアを抜けた美波が、追いかけるようにして圭に声をかけた。




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