180: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 21:24:19.36 ID:5HbT9nK2O
それから五日間、黒い幽霊が研究所内を歩くことは無かった。
二度目の失敗は一度目のときより遥かにこたえたが、しばらくすると希望的な観測が派遣者の中に生まれていた。あの亜人の女の人が美波と話をした政府の人といっしょにいるのなら、美波の弟だって外に出られるのかもしれない。いまはまだきっといろいろな検査をしているときだから、すぐではないにしてもその可能性がある以上、それを確認して見届けなければ。でも、黒い幽霊も送り込めないのにどうやって?
レインコートが雨を弾く音を聞きながら、その人物は光線が放たれてる場所を見ていた。ライトは地面に直線に走ったまま動かない。その光は目印のように固定され、誰かを導くのを待っているかのようだった。光線と爆発音がレインコートの人物の頭の中で明滅と反響を続けていた。
レインコートの人物は右側から回り込むように光線の根元へ近づいていった。フェンスに身体を付けながら腰を落として草を踏みながら進んでいくと、ライトがフェンスが四角く切り取られている部分を照らしていることに気がついた。レインコートの人物は唾を飲み込み、フェンスの穴を一気に通過しようと決めた。
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