175: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 21:12:07.71 ID:5HbT9nK2O
佐藤は濡れた帽子を拾い上げ、被り直しながら言った。帽子に穴は開いていなかった。
佐藤「さて、永井君。お迎えだよ」
佐藤は保管室に入っていった。その部屋は殺風景で、遺体安置室そのものだった。佐藤は「003」と通し番号がふってある埋め込み式の金属製の寝台を引き出した。
永井は死体のように静まりかえって横たわっていたいたが、上下する胸の動きや微かな呼吸の音が確認できる。腕の静脈から注入されている麻酔のせいで眠っているだけだった。佐藤はブッシュナイフの柄を両手で持つと、刃先が永井に対して垂直になるように構えた。
佐藤「君はどう仕上がるかな?」
佐藤がナイフを突き下ろした。刃物は深々と突き刺さり、やわらかい喉元を貫通した。ナイフを前後に動かし傷口を切り開いてからずるりと刃を引き抜くと、血が噴き出すかわりに黒い粒子が放出され、再生が始まった。佐藤は永井の生き返りが完了するまえに顔に巻かれた包帯を剥ぎ取った。包帯を床に捨てると、ちょうど永井が眼を開けたところだった。
永井はゆっくりと身体を起こした。
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