13: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:18:18.36 ID:5kzXp0UHO
結局、美波は父といっしょに広島に帰ることとなった。父親は民間の海洋研究所の臨時職員として再就職が叶い、それはまたしても同研究所に勤める彼の友人のおかげであったのだが、同時に彼の過去の行いのおかげでもあった。以前、日本外科学会の学会誌に掲載されたヒトデの体細胞を用いた移植組織の拒絶反応にも関わる体細胞免疫の研究発表をその友人と共同で執筆したのだ。そのことをきっかけに生まれた交流のおかげで、美波の父親は故郷の海の近くで海水や砂浜に生息する生物の研究に時間を費やすことになった。娘ふたりとの生活は、贅沢をしなければなんとかやっていける。
普通の生活水準こそ取り戻せたものの、そうなるまでには当然多少の時間がかかったし、その時間は美波に「優秀であること」の重要性を認識させることになった。高い技能を持ち、人との繋がりを強く多く持てば、なにかあったときにも助けてくれる人たちがいる。それが「優秀であること」の教訓だった。それは父親を見ることで感じたことであったし、義母からの言葉から受け継いだことでもあった。
学校の成績は常に上位をキープした。スポーツも心地よく種類をこなし、委員会や生徒会などにも参加した。柔和な表情と、人付き合いの良い性格もさいわいして、友人は多かった。大学進学後は多くの資格試験に挑戦し、そのほとんどに合格した。昔の友人との交流はいまでも途絶えず、新しくできた仲間との絆を強く感じる日々を美波は送っている。上京してからは、家族と会う機会も当然多くなった。義母や妹との会話も増え、特に妹は姉としてだけでなく、アイドルとしての美波も誇らしく思っている。
弟は違った。
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