238:名無しNIPPER[saga]
2016/12/20(火) 23:58:14.07 ID:IIiBXkp6O
「あ、あ、ああ…」
そうだ。彼は此処に、私の傍にいる。
私の手は彼の手を握っている。まだ温かい。そうだ、私はずっと傍にいたんだ。
傍に居ただけで何もしなかった。治癒術師なのに、医師なのに何も出来なかった。
「店主さん起きて、起きて下さい」
(医師なら分かるでしょう。もう彼はーー)
「うるさいッ!! 店主さん!しっかりして下さい!!」
もう止めましょう。
彼は私を庇って両脚を失って、それはもう酷い出血で、止血しても血は止まらなくて。
それから。それから。それから目を閉じた後……
『良かった。お前を守れて良かった』
『そんな、駄目です!! しっかり!しっかりして下さい!!』
『悔いはない。欲を言えば、盗賊と巫女の顔も見たかったがな……』
「嫌っ、嫌ッ、嫌ぁああああああああ!!!」
そう言って、そう言って動かなくなった彼はどうなった?
「違う!違う違う違う!! 彼はまだーー」
違わない、もう分かっているでしょう。
彼はもう動かない。彼はもう喋らない。
だって彼は、私の傍らで何の疑いようもなく死んでいるのですから。
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