勇者「救いたければ手を汚せ」 
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142:名無しNIPPER[saga]
2016/12/06(火) 00:33:20.80 ID:uyYIQu6tO

無事避難出来た者に傷はない、痛みもない。

だが傷がなくとも容易く壊れ、痛みがなくとも苦痛に喘いでいる。

かろうじて生き延びただけに過ぎない。この先どうなるかなど、誰にも分かりはしない。

もしかしたら、あの灰色の化け物が地下施設へ侵入してくるかもしれない。

如何に充実した設備があろうと、地下に押し込められた圧迫感、閉塞感が重くのし掛かる。

つい先程まで地上で暮らしていた人間が、それに耐えうるはずもない。

それは、この地下施設に限ったことではない。

規模は違うが、此処とは別に東部には五つの地下施設があり、北部は三つ、西部にも三つある。

地下に押し込められた全ての人々が、同じ痛みを感じているだろう。

しかも彼等は、勇者や盗賊や魔女のように『何故こうなったのか』など、知らない。

地上にいる者がどんな思いで戦っているかなど、誰一人として知らない。



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