勇者「救いたければ手を汚せ」 
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140:名無しNIPPER[saga]
2016/12/06(火) 00:30:15.84 ID:uyYIQu6tO

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人々は混乱していた。

突如として響き渡った絶望の声と、それによってもたらされた殺戮と破壊。

精霊によって西部北部より先に転移術式の起動に成功したが、被害が出ていないわけではない。

誰もが何かを失った。

ある者は妻を、ある者は夫を、ある者は子を、ある者は兄弟姉妹、祖父祖母を失った。

妻を見捨てて逃げ出した男性が、狂ったように壁に頭を打ち付けている。

恋人を化け物の前に突き出した女性は、血が出るのも構わず爪を噛み続けている。

子を失った夫婦は割り当てられた部屋に入ることもせず通路に立ち尽くし、虚ろな目で天井の明かりを見つめていた。

半狂乱となり暴れる者もいたが、同じく地下施設へ転移した兵士達によって連行されていく。

それを見送る周囲の人々の目に光りはなく、再び通路に座り込むと、膝を抱え顔を伏せた。



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