志希「それじゃあ、アタシがギフテッドじゃなくなった話でもしよっか」
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89:名無しNIPPER[sage]
2017/03/04(土) 01:41:18.55 ID:7MV/bgOk0

アタシは部屋のなかだっていうのに、息すらも凍り付くように白く染まっていた。
窓の外を眺めたら、昨日の蝶はもういなくなっていて、ああやっぱりあれは幻覚だったんだって、すこしだけがっかりしたっけ。

それで、気が付いたらスマートフォンの画面が明るく輝いていて、アタシは、はっと目を見開いたね。

『今日の仕事には間に合いそうか』
プロデューサーからのメッセージと共に、アタシは急いで支度を始めた。
その日は遠方の仕事に向かう予定になっていたんだけど、アタシと言えば、不幸なことに家を出るはずの時間に起きてしまったんだよ。

すぐにバタバタと慌ただしくカバンに荷物を詰め込みはじめたアタシは、ふと、実験ノートとピルケースに意識を向けた。
理由もなく、その二つを手に掴んだアタシは、ぼんやりと宙を見つめた。それで数秒ほど考えて、アタシはそれらをカバンのなかに一緒に入れたんだ。

それから、クローゼットから取り出したお気に入りの服に身を包むと、冷蔵庫から取り出したサンドイッチを頬張って、アタシは靴を履いた。

玄関口で踵を合わせている間、ぐるぐると一つのことが頭を巡っていたね。それで家の鍵をかけて走り出したときにはもう、それは色濃く浮かび上がっていたんだ。


――アタシが遅刻するのは、これで何回目だっただろう。


なんて、そんな言葉がさ。




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