志希「それじゃあ、アタシがギフテッドじゃなくなった話でもしよっか」
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34:名無しNIPPER[saga]
2016/11/16(水) 07:50:09.10 ID:jKYOWiSq0

休日は家で毛布にくるまって、ぼーっと過ごすことが増えた。なにをするでもなく、仕事のときの自分を振り返って、「なんで、あのときこういう風に出来なかったんだろう」と頭のなかで繰り返した。

ひとりの時間っていうのは、窮屈ではあったけど、物事をゆっくりと考えられるイイ機会でもあったんだよね。
部屋のなかで決まって考えたのは「どうしてアタシは、ギフテッドじゃなくなったのか」っていうことだった。

今、この状況は、夢でもなんでもない、たしかな現実で。原因不明の才能消失事件は、いまだに解き明かされてはいなかった。

神さまの気まぐれで与えられたものを、どうして今になって奪い取られてしまったのか。アタシの身に、いったいなにが起きたのか。才能は、どこに消えていったのか。

その答えを導くためには、どうにも頭が足りなかった。ほら、アタシがギフテッドだったら良かったのにねー。なーんて。

とにもかくにも、アタシは、生まれ変わる前のじぶんに執着していた。それも、憎しみだとか、怒りだとか、そんな負の感情を引っさげてさ。

藁にも縋る思いだったんだろうね。だって、そのときのアタシって、なにかの拍子にぷつんと切れてしまいそうなくらいギリギリの精神状態だったんだから。
それでもアイドルという仕事を続けていたのは、きっと「もういちど、あの輝かしい日々を取り戻す」っていう気持ちを捨て切れなかったからで。

そしてそれこそが、世界のすべてに絶望していたアタシの、「生きたい」と願う、せめてもの原動力でもあったの。




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