志希「それじゃあ、アタシがギフテッドじゃなくなった話でもしよっか」
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32:名無しNIPPER[saga]
2016/11/15(火) 01:31:06.79 ID:yf//iHNT0

困ったことに、アタシは彼の気遣いみたいな、そういうのぜーんぶがイヤだったんだよね。
あまりにも周囲の変化が速すぎて、きっとものすごく疲れてたんだろうね。アタシには誰かからのやさしさが、ささくれみたいに思えて仕方なかった。

彼に声をかけてもらうたび、心配してもらうたび、じくじくと胸が痛んだ。
いつだってフラッシュバックするのは、胸倉をつかまれた彼と、怒号を飛ばすディレクターの姿。

あの日、「ごめんなさい」と頭を下げるアタシに、彼は「そんな日もあるさ」と笑った。
彼が何を思ってそう言ったのかなんて、アタシには分からない。だけど、日を追うごとに罪悪感が募っていったのだけは確かだった。

「アタシね、才能がなくなっちゃったみたい。だからさ、アタシのこと憐れむなんて、そんなのやめてよー」そんなふうに話せれば、こころのなかの濁りも取れたのかもしれない。彼のことを嫌いにならなかったかもしれない。表面上の付き合いすらも放棄しなかったかもしれない。

人生のなにもかもが悪くなっていく中で、たったひとつだけ、サイアクに到達しちゃったわけ。


アタシ達の関係は大きく変わった――そう、それも、一番わるい方にね。





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