志希「それじゃあ、アタシがギフテッドじゃなくなった話でもしよっか」
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28:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 01:20:49.96 ID:LI2CmSiP0

だけどね、生まれ変わってからのアタシたちっていうのは、今までの関係とは大きくかけ離れていたの。

――最初のきっかけは、きっとモーニングコールだろうね。

さっきも少し話したとは思うけど、このときのアタシは夜ってものがホントに苦手で、一人きりで眠ることすらままならなかったの。なによりもイヤだったのは“あの事件”の光景がまざまざと瞼の裏に映ることだった。

布団のなかで、アタシは膝を抱えて、胎児みたいに丸まって。そしたらあのときの景色が思い浮かんでさ。大勢の前で歌えなくなったアタシが、ステージの上で「ごめんなさい」って何度も何度も子供みたいに謝るの。そしたら浴びせられる罵声のひとつひとつが鮮明に聞こえてきて。「お前にはアイドルの資格なんてない」「俺達を失望させないでくれ」「それで努力したつもりなのか?」なんて次々と棘が飛んでくる、そんな悪夢がアタシを苦しめて、いつしかアタシはうまく眠ることが出来なくなっていた。

そんなことだから、アタシは移動中の車内でうとうとと頭を揺らすようになって。ついには朝イチバンの仕事に遅れてくることも増えた。

ここで注意しておきたいのは、アタシがもともと真面目な優等生じゃなかったということ。何度も言うようで悪いけど、アタシがギフテッドじゃなくなったことは他の誰も知らなかった。

「一ノ瀬志希はてきとーに仕事をやっている」なんて噂が流れていることも知ってはいたけど、それはそれとして。

とにかくアタシ自身の“変化”は、まわりの人たちにはすこぶる分かりづらかったわけ。




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