志希「それじゃあ、アタシがギフテッドじゃなくなった話でもしよっか」
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24:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 17:46:47.74 ID:3cpNhopO0


ファンが離れ始めたのは、そんな事件が起きてしばらく経ってからだった。

ここで弁解させてほしいのは、アタシは一片たりとも仕事を怠けていなかったということ。アタシはアタシなりに苦しみながら頑張っていたし、頭にこびりついた凡人って言葉を振りほどこうともしていた。

あの事件以来アタシは小規模のライブをこなしていたんだけどね。言い換えれば、昔からついてきてくれていたファンに向けたステージで歌をうたっていたの。それに文句を吐き出すつもりもなかったし、どこか調子の悪いアタシを気遣ってくれた事務所の素晴らしい配慮だったとも思う。

もういちど繰り返すけど、アタシはそれまで十分に努力をしていた。それだけは認めてほしいの。

それじゃあどうしてステージをこなす度に来てくれる人の数が少しずつ減っていったのかというと、これはもうアタシの中で一つの結論が出てる。


んー、つまりね。天才アイドルから、天才を引いて出来上がったただの女の子には、どうにもみんなキョーミなかったってことなの。


ファンのみんなは、人とは違う天才的なアタシをステージで見たかった。ギフテッドのアタシに焦がれていた。アタシの一挙一動を見逃すまいと目をこらした。だからアタシがただふつーに頑張るステージなんてなんの魅力も感じなかったのかなって、そう思うの。だってさ、そんなのアタシじゃなくっても出来るんだから。ほかのみんなだってアタシと同じように頑張ってるんだから。

簡単な話だけど、だからこそアタシにどうすることも出来なくて。皮肉なことに、そのときようやくアタシは自分の手のひらから“才能”がこぼれ落ちたことを理解したんだよね。




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