志希「それじゃあ、アタシがギフテッドじゃなくなった話でもしよっか」
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16:名無しNIPPER[saga]
2016/11/05(土) 17:12:49.55 ID:Ck50Wm+A0


簡単に言えば、アタシは歌うことをやめちゃったんだよね。それだけならまだよかったのかもしれないけど、ついにはステージ上で座り込んじゃったの。
信じられないとは思うけど、BGMが鳴り続ける中でアタシは極度の緊張であたまが真っ白になって。足もガクガクって震えてたし、喉もカラカラに乾いててさ、とても歌を披露できるような状態じゃなかった。

あんなにやったダンスの振り付けも、歌も、なにも思い出せなくなって。ただただ誰かに見られることに吐きそうになって。

だけどその場所は生放送のソロステージ、それはもう放送事故もいいところで。
顔を抑えて蹲るアタシの元にすぐさまスタッフが駆けつけくれて。タオルを被せられて舞台裏に連れていかれる中、目の前に広がるきれいな景色は、まるでアタシに襲い掛かる怪物にさえ見えた。

俯いたアタシがようやく明るみから暗がりまでやってきたときには、プロデューサーが胸倉をつかまれていてさ。番組のディレクターに怒号を飛ばされていたの。

客席からの鳴りやまない声と、せわしなく動くスタッフと、何度も頭を下げるプロデューサーと、それを呆然と見守るアタシ。


その光景に、もう目の前がくらくらって白く瞬いて。

そこで、ようやく気づいたんだよ。

ああ、アタシは取り返しのつかないことをしてしまったんだって。




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