志希「それじゃあ、アタシがギフテッドじゃなくなった話でもしよっか」
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118:名無しNIPPER[saga]
2017/03/10(金) 23:20:09.90 ID:prvI6nFf0

そんなことがあってから、いくらかの日が経って。アタシはオーディションにのぞんだんだ。
結果はおもしろいくらいに散々だったね。結構自分なりに頑張ったつもりだったんだけど、まあ、それも仕方ないことなのかもしれないね。

でもさ。そんなオーディションで、審査員の人たちは口々に不満を言ってきたんだけどね。そんな中で、監督だけはアタシに向かって「手を抜いているのかい」と言ったんだよ。

でさ、アタシが「そんなことはありません」ってこたえたら、監督は「なるほど」と笑っていたね。

「なにがおかしいの?」とアタシが尋ねると、彼は「ああ、それを答える前に」と言って、他の審査員たちをみんな外に追いやったんだ。

それで、その場に立ち尽くしていたアタシの目の前で、監督は一人で腕を組んでいたんだ。

「さて。さっき見せてもらったダンスと歌、それはどっちも、とても褒められたものではなかった」彼は厳しい目つきで審査シートを眺めていた。

「にゃはは、そうだねー。アタシもそう思う」

「……ただ、演技は、びっくりするくらい心がこもっていたよ。まるでそれを経験したことがあるんじゃないかって思ったね」

どきりと胸が飛び上がりそうになった。

「審査の結果は、残念ながら、不合格だ――だけどね、おそらく君はその結果を糧にこの先もやっていけるはずだ」

「うーん、そうだといいけど」アタシは頭をかいた。

「いや、断言しよう。君はここがスタート地点なんだ」

「スタート地点?」アタシは彼の言葉を繰り返した。

「そうさ。今日が、生まれ変わった君にとっての、始まりの日なんだよ」

彼は嬉しそうにそう言った。その発言に、おもわずアタシは目を丸くした。




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