多分、素直になると、死んでしまう病気(艦隊これくしょん)
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151:名無しNIPPER[saga]
2023/06/21(水) 04:04:11.26 ID:eNQTcyQw0


――施設を使い、全員で水着に着替え、砂浜へと降りていく。

――サンダル越しに砂の熱さが伝わってくる。

――海に、来た。実感が今更ながらに湧いてきた……。


「どうですか? この水着。……ふふ、似合ってますか。ありがとうございます」

叢雲「なぁにデレデレしてんのよ! 秘書艦を放っておいて元艦娘にかまけてるんじゃないわよ!」

満潮「まったく、隙だらけね。鼻の下伸ばしちゃって。シャキっとしたら?」


――三人はそれぞれに、自分を海の方へと引っ張っていく。


「あー! 海ですね! テンションが上がってきました! 泳ぎましょう!」

叢雲「ちょっと、その前に準備運動よ! 司令官は当然だけど、あんたも艤装を外してるんだから」

満潮「そのもう一つ前に荷物とパラソルの設置を手伝いなさいよ、こんなもの誰が用意したんだか……あ、私か」

「なんですかそれ、満潮。平和ボケですか?」

満潮「そうかもねー。昔よりも気を張らずに生きられる気はする」

叢雲「へえ。その割に、鎮守府では変わらずうるさいけど」

満潮「当然でしょ。平和だからって仕事を真面目にやらない理由にはならない」

「満潮らしいですね」

叢雲「三つ子の魂百までって言うしね」

満潮「なにそれ?」

叢雲「変わらないものもあるってこと」

満潮「ふうん。それはそうでしょ」

「……そうですね。ああ……海も空も、こんなにも青いまま……変わってなかった」

満潮「……ずっとそうだったわ」

叢雲「……ええ。ずっと、ね」


――少女たちの横顔は、青い空と海に、いつかどこかの遠い記憶を写し出しているようだ。

――水平線の向こうから吹く風が、彼女たちの髪をなびかせた。

――熱をはらんだ潮風に夏が香る。

――遠い、いつかのどこかのように、今年もまた、夏が来たのだ……。


叢雲「司令官? いつまでぼーっとしてるわけ? ほら、海に入りましょ」

満潮「しっかりしてよね、司令官」

「さあ、行きましょう。提督」


――いえ、と彼女は小さく首を振って笑う。

――耳元に顔を近づけて、自分の名前を呼ぶ。

――自分も笑って、彼女の名前を呼んだ。

――風が吹いて、三人の髪がなびくのが見える。

――それでやっと、自分も素直になれる時がきたのだと、そう思った。




おわり



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